🏥 病院情報システム 担当者向けシリーズ 情報システムをご担当になった方へ。引き継ぎ資料が十分でない場合を前提に書いています。
この記事について
病院の情報システム担当は、一人または少人数で任されることが少なくありません。前任者が不在だったり、資料が古かったりすることもあります。
何から手をつけるかで、その後の数年の動きやすさが変わります。 優先順に10項目を挙げます。
まず3つ — 障害時と更新時の両方で必ず要るもの
① 止まると診療が止まるものは何か
システムの一覧を作ります。ただし、名前を並べるだけでは足りません。
| 見るところ | なぜ |
|---|---|
| 止まったとき、診療は続けられるか | 優先順位が決まる |
| 代替手段(紙の運用)はあるか | 実際に運用できるかは別問題 |
| どのシステムが、どれに依存しているか | 1つ止まると連鎖する範囲が分かる |
⚠️ 「電子カルテ」だけを見ないでください。検査・画像・給食・物流など、部門システムが止まっても診療は滞ります。
② 契約はどこにあるか
保守契約の現物を確認します。
- 保守の範囲(どこまでが契約に含まれるか)
- 期限(いつ切れるか。自動更新か)
- 窓口(夜間・休日はどこに連絡するか)
- 応答時間(何時間以内に対応する約束か)
🔴 特に確認したいのは、セキュリティアップデートの責任がどちらにあるかです。厚生労働省のガイドラインは、契約書等に記載がなければ医療機関側の責任となっている可能性があるとしています。
詳しくは別記事で扱いました。
③ 外部とつながっている場所はどこか
厚生労働省は、オンプレミス型のシステムについて次のように指摘しています。
多数の部門システムの外部接続点の確認等に関する病院側負担が大きく、セキュリティ面の脆弱性が解消できていない
(病院の情報システムに関する現状と課題について、2024年12月2日)
接続点の一覧が院内に存在するかを確認してください。無ければ、作ることが最初の仕事になります。
- ベンダーの保守回線(いつ、誰が、どこから入るか)
- インターネット接続
- 他院・検査センターとの連携
- 持ち込み機器・USB の運用
次の4つ — 日常を回すために
④ 誰が何の権限を持っているか
アカウントの一覧と、権限の設計です。退職者のアカウントが残っていないかは、着任時に必ず確認したい項目です。
⑤ バックアップは取れているか、戻せるか
「取れている」と「戻せる」は別です。復元を試したことがあるかを確認してください。試したことがなければ、それが次の仕事です。
⑥ 障害のときの連絡経路
夜間・休日を含めて、誰に、どの順で連絡するか。紙で貼っておく価値があります(システムが止まっているときに、システム上の連絡網は見られません)。
⑦ 過去に何が起きたか
障害の記録、ベンダーとのやりとり、過去の更新の経緯。同じ問題が繰り返されることは珍しくありません。記録が無ければ、今から残し始めます。
残る3つ — 先を見るために
⑧ 次の更新はいつか
各システムの保証期限・サポート終了時期を並べます。更新は数年がかりの話で、着任した年に始まることもあります。
⑨ 予算はどうなっているか
年間の保守費、更新に向けた積立、稟議の流れ。費用の話が分かると、提案が通りやすくなります。
⑩ 院内で相談できる人は誰か
医事、診療情報管理室、各部門のキーパーソン。技術は調べれば分かりますが、院内の事情は聞かないと分かりません。
診療情報管理士がいる病院では、データの意味が分かる数少ない同僚になります。
一人で抱えないために
10項目を挙げましたが、すべてを一人でやる前提で書いていません。
特に②③⑤は、分からないままにしておくと事故につながるものです。ベンダーに聞く、上長に相談する、外部に確認を依頼する——どれでも構いません。
⚠️ 「担当だから分かっているはず」という前提が、一人情シスの最大の負担になります。分からないことを分からないと言える状態を作るところまでが、最初の仕事だと考えています。
まとめ
| 優先 | 項目 |
|---|---|
| まず | ① 止まると診療が止まるもの ② 契約の所在と範囲 ③ 外部との接続点 |
| 次に | ④ 権限 ⑤ バックアップと復元 ⑥ 連絡経路 ⑦ 過去の記録 |
| 先を見て | ⑧ 次の更新時期 ⑨ 予算 ⑩ 院内の相談相手 |
弊社について
MEDICT は、大学病院の医療情報部・県立病院の電子カルテ統括などに携わってきたメンバーで構成しています。体制づくりや現状把握の段階からご相談を承ります。