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医療DX

院内に「診療情報のプロ」がいるのに、活かせていないのではないか — 診療情報管理士という資産

🏥 病院情報システム 経営層向けシリーズ 理事長・院長・事務長・経営企画のみなさまへ。今回は新しい投資を伴わない話です。

結論から

多くの病院が「データを経営に活かしたい」と言い、外部にデータ分析を委託しています。

一方で、院内には診療情報を扱う有資格者がいます。 その業務が、カルテの管理と病名の登録作業に閉じている例が少なくありません。

この非対称は、人の問題ではなく配置の問題です。そして配置は、経営層が決められます。


診療情報管理士とは

四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)および医療研修推進財団が共同で認定する資格です。

認定者数49,802人超(2026年時点)
国際的な呼称Health Information Manager(HIM)
位置づけ医療の安全管理や病院経営管理に関わる、高い専門性とスキルを必要とする職種

出典: 日本病院会 診療情報管理士通信教育

業務は、次のように定義されています。

患者の様々な診療情報を中心に人の健康に関する情報を国際統計分類等に基づいて収集・管理し、データベースを抽出・加工・分析し、様々なニーズに適した情報を提供する

(同)

「抽出・加工・分析」 が資格の定義に含まれている点に注目してください。記録の保管だけを担う職種として設計されてはいません。

接している制度は、経営に直結しています

診療情報管理士が関わる制度には、次のようなものがあります。

制度経営との関係
DPC/PDPS入院医療費の算定方式。病名の付け方(コーディング)の精度が収入に直結する
がん登録法定の届出。精度は病院の質評価に関わる
医療事故調査制度診療記録の管理が前提になる

いずれも、経営会議で議題になる領域です。


なぜ活かせていないのか

現場の怠慢ではありません。構造的な理由があります。

① 求められる仕事が、締切のあるものから埋まる

DPC の病名登録も、がん登録の届出も、期限があります。分析は期限がありません。

期限のある業務が積まれていれば、そちらから処理されます。これは個人の姿勢ではなく、業務設計の結果です。

② 分析を依頼する経路がない

経営企画が「このデータを見たい」と思ったとき、診療情報管理室に依頼する経路が組織図にないことがあります。

結果として、外部のコンサルタントやベンダーに依頼することになります。

③ 分析の成果を評価する仕組みがない

登録した件数は数えられますが、「分析によって何が変わったか」は測りにくい。評価されないものは、優先されません。


何を変えられるか

経営層の判断で動かせるものを挙げます。

① 依頼の経路を作る

経営企画や医事から診療情報管理室にデータ分析を依頼できる、という経路を組織として明示する。それだけで動き出すことがあります。

② 時間を確保する

登録業務の時間配分を見直し、分析に充てる時間を制度として確保する。「余裕ができたら」では、余裕はできません。

③ ベンダーとの協議に同席してもらう

システム更新の要件協議で、院内で唯一「データの意味」と「医療の業務」の両方が分かる職員であることがあります。

前回の記事で、要件を決めるには「医療の業務」「システム」「調達」の3つが同時に分かっている必要がある、と書きました。診療情報管理士は、そのうち2つに近い位置にいます。

④ 育成の機会を用意する

DPC分析、統計、データベースの扱いなど、継続的な学習の機会を用意する。認定資格の取得支援も含みます。


注意しておきたいこと

「診療情報管理士がいれば外部の支援は不要」ということではありません。

弊社は外部の支援を提供する事業者です。その立場から申し上げても、それは事実として正確ではないと考えます。

  • 診療情報管理士の専門は診療情報の管理と分析であり、システム調達や契約の設計は別の領域です
  • 一人で担える範囲には限界があります(多くの病院で少人数体制です)
  • 外部にしか見えないもの(他院との比較、市場の相場観)もあります

実際に速いのは、院内の有資格者と外部が組む形です。院内の人が業務とデータを知っていて、外部が調達と比較を持ち込む。役割が違います。

⚠️ また、業務を増やすだけの提案にならないようご注意ください。時間を確保せずに「分析もお願いします」と言えば、期限のある業務が押し出されるか、その人が疲弊するかのどちらかです。


まとめ

診療情報管理士は資格の定義に「抽出・加工・分析」を含む専門職
接している制度はDPC・がん登録など経営に直結する領域
活かせていない理由は個人ではなく業務設計と組織の経路にある
変えられるのは依頼の経路・時間の確保・協議への同席・育成の機会

新しい投資を伴わずに動かせる資源として、一度棚卸ししてみる価値はあると思います。


弊社について

MEDICT は、大学病院の医療情報部・県立病院の電子カルテ統括などに携わってきたメンバーで構成しています。診療情報管理士の有資格者が在籍し、養成校で講師も務めています。そのため本記事は、外から見た一般論ではなく、この職種の実務を知る立場から書いています。

院内の体制づくりと外部支援の切り分けについても、ご相談を承ります。

ℹ️ 資格の定義・認定者数は日本病院会の公開情報に基づきます(参照時点の値)。 院内での業務範囲は病院によって大きく異なります。本記事は一般的な傾向を述べたものです。

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