📚 標準化シリーズ ― 実例編(本編は全4回)
⚠️ この記事の性格(先にお読みください) 本記事は、2026年6月時点で HL7 FHIR に対応、または FHIR を組み込んだ主なサービス・製品を 公開情報に基づいて中立に俯瞰するものです。特定製品の推薦・保証ではありません。また、製品の対応状況・対応バージョン・提供地域は変化が速いため、この記事は 網羅的ではなく、あくまでスナップショット です。導入検討時は、必ず各社・各プロジェクトの最新の公式情報をご確認ください。なお本記事は 2026年6月時点の定点観測であり、状況の変化に合わせて、時期を改めて更新していく予定です。
はじめに ― 「実際に FHIR を使っているもの」を俯瞰する
標準化シリーズでは、標準化の全体像から標準マスタ、HL7 FHIR、JP Core と、仕組みを見てきました。
この実例編では、視点を変えて 「では、実際にどんな製品・サービスが FHIR に対応しているのか」 を、カテゴリ別に一望します。全体像をつかむための地図としてお使いください。
① 国の基盤・制度
まず土台は、国が整備する基盤です。FHIR を中核データ仕様に据えています。
- 電子カルテ情報共有サービス … 3文書6情報を FHIR でやり取り(本格運用は2026年度冬頃を目標とするモデル事業段階)
- 全国医療情報プラットフォーム … 施設間で標準化データを流す国の連携基盤
- 電子処方箋 … 現行の正式フォーマットは HL7 CDA。FHIR記述仕様も整備が進む(第3回参照)
- 標準型電子カルテ … デジタル庁が開発中。小規模医療機関でも標準に沿ったデータを扱える
(出典:厚生労働省 電子カルテ情報共有サービス)
② 国内の電子カルテ・主要ベンダー
国内の主要な電子カルテベンダーは、電子カルテ情報共有サービスへの対応や、HL7 FHIR・SS-MIX2 といった厚生労働省標準規格への対応を進めています。
- 富士通(HOPE シリーズ ほか)… HL7 FHIR・SS-MIX2 対応を推進
- NEC(MegaOak シリーズ ほか)
- ウィーメックス(旧 PHC、メディコム シリーズ)… 標準化・情報共有サービス対応の解説を公開
📝 上記は代表例です。対応製品・対応時期・対応範囲・対応バージョンは各社で異なり、変化します。実際の可否は、社会保険診療報酬支払基金の医療機関等向けポータルや、各社の公式情報でご確認ください。
(出典:富士通 ヘルスケア/ウィーメックス メディコム)
③ クラウドの FHIR 基盤(グローバル)
大手クラウドは、FHIR をネイティブに扱えるマネージドサービスを提供しています。FHIRサーバの構築・運用を自前でやらずに済むのが利点です。
- Google Cloud Healthcare API … FHIR・HL7 v2・DICOM に対応。BigQuery連携や匿名化、大規模分析に強い
- Microsoft Azure Health Data Services(FHIR service)… Microsoft系(Entra ID・Power BI・Synapse)と親和
- AWS HealthLake … FHIR対応のデータレイク。NLPやSageMaker連携。2025年末に FHIR Subscriptions(変更通知)に対応
(出典:各社公式 Google Cloud Healthcare API/Azure Health Data Services/AWS HealthLake)
④ FHIR サーバ/開発基盤(OSS・商用)
アプリや連携基盤を作るための、FHIRサーバ製品・SDKです。
- HAPI FHIR … 最も広く使われる OSS のFHIRサーバ(Java)。Smile CDR 社が保守
- Smile CDR … HAPI をベースにした商用の臨床データリポジトリ
- Firely Server(.NET)/Firely .NET SDK … FHIR 提唱者らが立ち上げた製品・ツール群
- Aidbox(Health Samurai)… FHIR・GraphQL 対応のフルスタック基盤
- LinuxForHealth FHIR(旧 IBM FHIR Server)/Microsoft FHIR Server(OSS)… サーバ実装の選択肢
⑤ 適合性・検証ツール
FHIR データが仕様どおりか確かめる、テスト・検証ツールです。JP Core/JP-CLINS 対応の確認にも欠かせません。
- 公式 FHIR Validator … StructureDefinition に沿っているかを検証
- Inferno(米国 ONC)… 適合性テストのフレームワーク
- Touchstone(AEGIS)… 相互運用性テスト基盤
- JP-CLINS Validation ツール(jpfhir.jp)… 電子カルテ情報共有サービス向けの検証情報
⑥ PHR・アプリ連携
患者本人がデータを持ち歩く PHR、そしてアプリ連携の入口です。
- Apple ヘルスケア(Health Records) … FHIR ベースで医療記録の閲覧に対応(対応は地域・医療機関により異なる)
- SMART on FHIR … FHIR の API で外部アプリが(本人同意のもと)データを読み書きする国際的な仕組み
- マイナポータル(医療保険情報取得 API) … 本人の医療・健診情報を取得し、民間PHR等と連携する国の入口
- 民間 PHR サービス … マイナポータル連携やデータ利活用を掲げるサービスが登場(例:JMDC ほか)
(出典:マイナポータル API/経済産業省 PHR関連資料)
クリニック・中小医療機関にとっての見方
- まず確認すべきは、自院の電子カルテが「電子カルテ情報共有サービス(JP-CLINS)対応」かどうか、そして対応時期
- 自前で FHIR サーバを持つ必要は、多くのクリニックではありません。国の基盤やベンダー製品が対応を担います
- 新しいアプリ・PHR連携を検討するときは、SMART on FHIR やマイナポータルAPI に対応しているかが接続性の目安
- 「FHIR対応」を名乗る製品でも、対応するIG(JP Core/JP-CLINS)とその版まで確認するのが安全
まとめ
- 2026年6月時点で FHIR に関わる製品・サービスは、国の基盤/国内電子カルテ/クラウド基盤/FHIRサーバ/検証ツール/PHR の6層で広がりつつある
- クラウド(Google・Azure・AWS)と OSS(HAPI ほか)が開発の土台、国内ベンダーは情報共有サービス対応を推進中、PHRは Apple・SMART on FHIR・マイナポータルAPI が入口
- ただし普及・対応はこれからの領域が多い。本記事はスナップショットであり、最新情報は各公式で確認を
📎 標準化シリーズ(全4回)+実例編
- (第1回)医療等情報の『標準化』とは
- (第2回)標準マスタ入門 ― 病名・医薬品・検査コードの世界
- (第3回)今更聞けない HL7 FHIR ― FHIR R4・JP Core
- (第4回)JP Core とは何か ― 日本版FHIRの共通基盤
- (実例編・本記事)FHIRに対応する主なサービス・製品カタログ
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本記事は、各社・各プロジェクトの公開情報(2026年6月時点)に基づく中立なスナップショットであり、特定製品の推薦・保証ではありません。製品名・サービス名は各社の商標です。対応状況・対応バージョン・提供地域は変化するため、導入検討時は各公式情報を必ずご確認ください。