📄 参照: 国際モダンホスピタルショウ2026(2026年7月8〜10日)/ 第27回 日本医療情報学会看護学術大会(7月10〜11日・神戸)。本記事は、両イベントの公開プログラムをもとに、医療現場の視点で2026年のトレンドを整理したものです。
概要
2026年7月、医療情報の世界で2つの大きなイベントが相次いで開かれます。ひとつは、医療機関の情報システム・機器が一堂に会する 国際モダンホスピタルショウ2026(7月8〜10日)。もうひとつは、看護と情報の専門家が集う 第27回 日本医療情報学会看護学術大会(7月10〜11日・神戸)です。
対象は「病院システム全体」と「看護の現場」で異なりますが、2つのプログラムを並べて読むと、2026年のトレンドがくっきり浮かび上がります。ここでは、現場目線で5つの潮流を深掘りします。
トレンド①:生成AIが「使うか」から「どう実装・定着させるか」へ
もっとも鮮明なのが、生成AI(LLM)が実装フェーズに入ったことです。
ホスピタルショウでは「生成AI時代に医療機関はどう備えるか」がセッションに掲げられ、看護学術大会では大会長講演「看護の未来につなげるDX・AIの舵取り」を筆頭に、演題レベルで具体的な実装事例が並びました。
- 退院サマリーの自動生成
- LLM(大規模言語モデル)による看護サマリ生成
- 院内生成AIによる看護師の判断支援
- AI看護記録支援システムの導入
注目すべきは、話題が「AIは使えるのか?」という段階を越え、「どの業務に、どう組み込み、どう定着させるか」に移っていることです。医療機関にとって生成AIは、もはや様子見の対象ではなく、実装計画の対象になりつつあります。
トレンド②:すべての起点にある「2040年」
生成AIや効率化の議論の背後に、共通の時間軸があります。2040年です。
- ホスピタルショウのオープニングセッション:「2040年を見据えて創る病院機能分化と連携」
- 看護学術大会の特別講演:「DX・AIを看護にどう活かすか〜『看護の将来ビジョン2040』の実現に向けて〜」
生産年齢人口が減り、医療需要の構造が変わる2040年を見据えて、病院の機能分化・地域連携・人材の使い方をどう再設計するか。DXやAIは、その手段として位置づけられています。「効率化のためのAI」ではなく、「将来の医療を支えるための構造転換」という文脈で語られている点が重要です。
トレンド③:標準化と地域連携 ― つなぐための土台づくり
つなぐ・活かすための土台として、標準化が引き続き主軸でした。
ホスピタルショウでは標準型電子カルテ(2030年に向けた全国普及)が、看護学術大会では「看護記録構造の再設計」「看護サマリの標準化と自動転記システム」「電子カルテ標準機能の活用」といった演題が並びました。生成AIで記録を「書く」効率が上がっても、構造が標準化されていなければ『活かす(=転記・連携・分析)』ことはできません。AIの実装と標準化は、車の両輪です。
あわせて、「地域統合型医療の実現に向けたエコシステムの構築」(ホスピタルショウ)や「ICTは目的ではなかった―地域医療連携の現場で起きていた対話と試行のプロセス」(看護学術大会シンポジウム)など、地域連携も一貫したテーマでした。
トレンド④:令和8年度診療報酬改定と、AIの「評価のされ方」
両イベントとも、令和8年度(2026年度)診療報酬改定を正面から取り上げています(看護学術大会では特別講演として設定)。
診療報酬は、現場のIT・AI投資の判断に直結します。2026年度改定では、AIが「独立した加算」ではなく既存の評価体系に組み込まれる方向が示されており、この点は本メディアでも別記事で解説しています。「AIを導入したら加算」ではなく、「AIで質・効率が上がった結果が評価される」という設計を、現場は読み解く必要があります。
トレンド⑤:DXの定着は「技術」ではなく「組織と人」の問題
そして、2026年ならではの成熟した論点がこれです。看護学術大会のシンポジウムタイトルが象徴的でした。
- 「DXが定着する組織には”わけ”がある」
- 「ICTは目的ではなかった―地域医療連携の現場で起きていた対話と試行のプロセス」
ツールを入れれば変わる、という段階はもう過ぎました。同じシステムを導入しても、定着する組織としない組織がある。その差は、技術ではなく、現場との対話・運用設計・小さな試行の積み重ねにあります。搬送ロボットや勤務表最適化といったタスクシフトの事例も、「入れて終わり」ではなく「現場が本当に楽になるか」で語られていました。
🔒 セキュリティも一貫したテーマ:ホスピタルショウでは、ランサムウェア対策と多要素認証が繰り返し取り上げられました。これは2026年6月に改定された安全管理ガイドライン第7.0版の方向とも一致します。DXを進めるほど、守りの基礎が問われます。
クリニック・中小医療機関にとっての示唆
大規模病院の話に見えるかもしれませんが、これらの潮流は中小の医療機関にも確実に降りてきます。
- 生成AI:まずは記録・文書作成など、負担の大きい事務から。「導入」より「どの業務を楽にするか」を先に決める
- 標準化・クラウド:標準型電子カルテやクラウド型サービスの普及は、小規模ほど恩恵が大きい(第7.0版の『保守委託機関編』も後押し)
- 定着:ツール選びより、スタッフとの対話と小さく始めること。これは規模を問わず変わりません
まとめ
- 2026年のキーワードは、生成AIの「実装・定着フェーズ」入り。看護では退院サマリー自動生成やLLMによる記録支援が具体化
- すべての起点は2040年を見据えた構造転換。標準化・地域連携・診療報酬改定が土台
- 最大の学びは、「DXの定着は技術でなく組織と人の問題」。ツール導入より対話と運用が成否を分ける
華やかなAIの話題の裏で、「標準化」「定着」「守りの基礎」という地味な土台づくりが、2026年の本当のトレンドなのかもしれません。
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本記事は、国際モダンホスピタルショウ2026 および 第27回 日本医療情報学会看護学術大会 の公開プログラムに基づき、医療現場の視点で2026年のトレンドを整理したものです。個別の講演内容は各主催者の公式情報をご確認ください。MEDICT は医療機関専門に IT 支援を行い、ホームページ制作や予約システム myappt などを提供しています。