🖥 やさしい解説シリーズ(技術編) / PR 「医療システムは院内に置くもの」から、条件付きでクラウドへ——。医療ならではの判断軸を、病院IT・ベンダーの視点で整理します。本記事は書籍の広告(アフィリエイトリンク)を含みます(広告について)。
まず用語
- オンプレミス:機器を院内に置き、自分たちで管理する。
- クラウド:事業者のサーバを借りて使う。SaaS 型の電子カルテも増えている。
- ハイブリッド:両方を適材適所で使う。
かつて医療は「閉域・オンプレ一択」が常識でしたが、いまは条件を満たせばクラウドも選べる時代です。
🔴 医療でクラウドを使うための前提
医療情報は要配慮個人情報。クラウドに置く場合、3省2ガイドラインの順守が出発点です。
- 保存場所:データがどこ(どの国)に保存されるか。国内法の適用範囲・越境移転に注意。
- 暗号化・アクセス制御・監査ログ:保存時・通信時の暗号化、誰がいつ参照したかの記録。
- 責任分界点:障害・漏洩時に「医療機関」と「クラウド事業者」のどちらの責任か。契約で明確化する。
- 委託契約:クラウド事業者は個人情報の「委託先(再委託先)」。契約と監督義務を果たす。
「安いから」「便利だから」だけでクラウドに患者情報を出すのは危険。ガイドラインと契約が前提です。なお両ガイドラインは近年改定され(医療機関向け 第6.0版、事業者向け 第2.0版〔2025年〕)、クラウド利用・責任分界・ゼロトラストへの対応が強化されています。
クラウド活用は、実際に進んでいる(実例)
「医療=オンプレ一択」は過去の常識。国内外で医療×クラウドは現実に動いています。
国内
- クラウド(SaaS)型の電子カルテが診療所を中心に普及(電子カルテ普及率は2025年で病院 77.7%/診療所 71.0%、国は2030年 100% を目標)。
- 国の標準型電子カルテは SaaS型・ガバメントクラウド対応を想定し、2025年に山形県の診療所で α版提供を開始。
- 「電子カルテ情報共有サービス」やオンライン資格確認・電子処方箋も、クラウド型の共通基盤として動いています。
海外(当媒体の事例より)
- Mayo Clinic × Microsoft:医療専用AIをクラウド基盤で開発・提供。
- CommonSpirit:クラウド上で AI を大規模に運用。
- ベルギーの大学病院:電子カルテに生成AIを組み込み。
→ 論点は「使うか否か」ではなく、どう安全に使い分けるかに移っています。
判断軸 ― オンプレ / クラウド / ハイブリッド
| 観点 | オンプレミス | クラウド |
|---|---|---|
| セキュリティ | 閉域で出さない安心感。ただし自前で守る責任 | 事業者の統制を活用。ただし設定・委託管理が要 |
| BCP・災害 | 院内被災でデータも危険。遠隔バックアップが課題 | 遠隔地保管・冗長化で災害に強い場合が多い |
| コスト(TCO) | 初期投資大・更改時にまた大きな出費 | 初期小・月額/年額で平準化。長期では積み上がる |
| 運用負荷 | 自前で保守・更新・監視 | マネージドで負荷減(その分 事業者依存) |
| 多拠点・拡張 | 拠点ごとに構築。拡張は重い | 拠点追加・拡張がしやすい |
「どちらが上」ではなく、自院の優先順位(守り方・災害対策・予算・拠点数)で選ぶものです。
医療の現実解 ― 「全部」ではなく線引き
実務では、全部クラウド/全部オンプレの二択ではなく、ハイブリッドで線引きするのが安全で現実的です。
🔴 患者情報をクラウドに出す前のチェック:①3省2ガイドライン順守 ②国内保存・暗号化 ③責任分界を契約で明確化 ④アクセス制御・監査ログ ⑤クラウドに出す情報を必要最小限に。
まとめ
- 医療でも条件付きでクラウドが選べる時代。前提は 3省2ガイドライン(保存場所・暗号化・責任分界・委託契約)。
- 判断軸は BCP・コスト(TCO)・運用負荷・セキュリティ・多拠点。オンプレ/クラウド/ハイブリッドを使い分ける。
- 現実解は線引き。要配慮個人情報は院内、識別情報やバックアップ・分析はクラウド。出す情報を最小化するのが安全。
学びを深める
公式ガイドライン(一次情報・無料)
クラウド可否・責任分界の正確な判断は、まず一次情報から。
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(厚生労働省) ― 医療機関向け。クラウド利用・外部委託・責任分界の要件。
- 医療情報を取り扱う事業者向け 安全管理ガイドライン(経済産業省・総務省) ― クラウド事業者側の要件(2025年に第2.0版)。
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